ドリルを売るには穴を売れ
佐藤 義典
本書はマーケティングの入門書としてオススメである。
「マーケティング」と聞くとなんだか難しいイメージがあるが、「価値を提供する」というシンプルな切り口から、初心者にも分かりやすくマーケティングについて紹介している。
ストーリー形式で読みやすいし、内容もしっかりとしている本書はマーケティングを学ぶ人にとって最初に一冊になるだろう。
マーケティングを難しく考えないこと
売上が悪く、改善案を出さなければ店が潰れるという状況を、なんとかしなければいけないというストーリーで始まるこの書籍は、ストーリー性があり非常に読みやすいだろう。
マーケティングと言われると、人口推移や顧客調査というような難しいデータを分析し、その中から利益を上げるための戦略を考えるといったような光景を思い浮かべる人もいるはずだ。
難しい根拠を並べないとものやサービスは売れないと思ってしまうのも事実だが、本書はもっと根底からマーケティングについて考えている。
本書がマーケティングで重要としているのは「価値」である。
同じような店やサービスがある現代で、どうしたら自分の店が選ばれるだろうか?どうしたら人が集まるだろうか?
そのシンプルな答えが「価値」を与えること。
考えてみてほしい。あなたが最近行ったら飲食店はなぜそこにしたのだろうか?おいしいから?安いから?店員の愛想がいいから?
あなたが思いついたその理由こそがその店が提供している「価値」になる。
マーケティングの基本「4つの理論」
マーケティングの基本中の基本として、「4つの理論」について紹介されている。
ベネフィット ー 顧客にとっての価値
セグメンテーションとターゲッティング ー 顧客を分けて絞る
差別化 ー 競合よりも高い価値を提供する
4P ー 価値を実現するための製品・価値・販路・広告
上記の4つは基本として非常に重要であると説いているとともに、ストーリー形式で1つ1つの内容を紹介している。
4つの理論は「そもそも提供したい価値は何か?」から始まり、「どのように価値を提供するか?」まで、価値について考えることができる。
考えるためのフレームワークのようなものについては紹介されていないが、入門書と言う点を考えると、考えるべきポイントはまとめられていると言える。そこあたりを詳しく知りたい人は他の書籍も合わせて読むことをオススメする。
強い戦術を考える
4つの理論を元に、しっかりと「価値」について考えぬかれたマーケティング戦術は強い。
店の名前から店員の服装、値段やターゲットに至るまで考えぬくことによって、結果は必ずついてくる。注意したいのは一貫性と集中だ。
商品軸、手軽軸、密着軸といった3つの価値の軸を紹介しているが、そのすべてをいっぺんに提供することはできない。どれかに集中することでその価値を最大限に高めることができる。「おいしい」「安い」「店員の丁寧」といったように、いっぺんに実現しようとすると一貫性に欠け、その価値がぼやけてしまう。
本書では東京ディズニーランドが紹介されているので見て欲しいが、「価値」を最大限提供するための戦略が素晴らしい。価値を考え、データと照らし合わせることによって、その戦略はより強いものになる。
コーヒーショップでは、スタバとトドールといったようにそれぞれの狙っているターゲット、価値を提供する戦略について考えてみると、それぞれ違った価値の提供をしているのが面白い。
難しいところから考えず身近なところから考えていく本書は、初心者の入門書としてオススメで是非読んでほしい。