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ポジティブに考えよう!渡辺和子に学ぶ人生の生き方

面倒だから、しよう

渡辺和子

この本は、渡辺和子氏の100万部を超えるベストセラー「置かれた場所で咲きなさい」の続編ともいえる一冊である。

 

「置かれた場所で咲きなさい」では筆者の生い立ちと少女時代が語られたが、本書ではさらに筆者の学生時代や若くして渡米した修道院での生活なども語られている。

 

筆者は修道女であると共に、ノートルダム清心女子学園の理事長を務める教育者である。そのため、この本もこれから社会に出る若い世代の人々を念頭に語られたメッセージが多いが、その教えは若者のみならず、中高年、老年とあらゆる世代の人の心に染みるものであると思われる。

 

本書は2~3ページごとで一つのまとまりになっているため、部分的に拾い読みをするだけでも十分に内容を理解できるようになっており、ちょっとした空き時間の読書用にも適している。

若者たちに注ぐ、母のような厳しさと優しさ

 

最近の若者たちの化粧やファッションの中には、上の世代にとって理解しがたいものも含まれている。若い人たちにうるさがられないために、たいていの大人たちは見てみないふりをするものである。

 

しかし80代の筆者は、10代、20代の女子学生に向かって「そのお化粧もう少しなんとかならないの」とはっきり指摘する。さらに、大学には学問にふさわしい服装というものがあり、自由があるということはそれに伴って責任もあるのだと説く。

 

また、異性の前で相手に嫌われないために自分をなくしてまで着なれない洋服を着て無理をする必要はない、あなたをあなたとして受け入れてくれる人と付き合うべきだとも忠告している。

 

「(学生たちには)きれいさと共に心の美しさを育てていく人であってほしい」と、母のような厳しさと愛情を持つ彼女のもとには、相談を希望する学生たちの列が絶えないそうである。

 

人生の苦難への究極の対処法とは?

 

わずか30代なかばで学長という大役についた筆者であったが、その道のりは決して平たんなものではなかった。

 

初めての日本人学長という風あたりの強さと葛藤。その苦難の中で彼女は、耐えることと、謙虚に生きることの大切さを教えられたという。

 

その後も彼女は50代で鬱病に、60代半ばで膠原病、その副作用による骨粗鬆症、三度の圧迫骨折と、様々な痛みや苦しみに襲われ、80代となった今では「若いころに30分でできていたことが一時間かかる」こともあるという。

 

しかしそれでも彼女は「老いてなおできること、それはふがいない自分を、あるがままに受け入れ、機嫌良く感謝を忘れず生きること」と語り、前向きな姿勢を忘れない。それこそが、86歳(執筆当時)になってもなお、現役で働き続ける筆者のパワーの秘訣かもしれない。

 

傷つけられた心の傷を癒すには

 

「修道女」というと、俗世間から隔絶し、あらゆる悩みや下世話な感情とは無縁の雲の上の人というイメージを抱きがちである。ましてや筆者の写真などを見ると、その柔和なほほ笑みに、この人は他人への嫉妬や憎しみにかられることないのだろうなと思ってしまう。

 

しかしそんな彼女も「思い切り仕返しをしたいと思ったことも」あるのだという。現に筆者は、わずか9歳のときに目の前で父親を惨殺された経験を持っている。他人から受けた心の傷から自分の心を癒すためには、まず「思いを断ち切ること」が大切であるという。

 

いつまでも心の傷にこだわっている限りは、自分は相手の支配下から逃れることはできない。かえって相手を許すことで、相手の束縛から自由になれるのだという。戦争やテロなど、報復の連鎖がうずまく現代社会において、本当の強さとは、敵を憎む心ではなく、敵を許す心ではないかと思わされる。

 

家庭や社会を照らすものとは

 

この本全体をとおして、筆者は「ほほ笑むこと」「当たり前のことを心を込めて行うこと」の大切さを繰り返し説いている。

 

それは、筆者がマザーテレサをはじめとして多くの人生の先輩たちから学んできたことでもある。

 

時間の使い方は命の使い方であるから、皿の一枚でも丁寧に心を込めて並べること、物を受け取るときは両手で丁寧に受け取ること…。いずれも当たり前のことではあるが、現代社会においては失われつつあることである。

 

この本を読んだ人たちが、隣にいる家族や友人たちにほほ笑みを向けることができれば、そのほほ笑みはやがて周りに広がっていくだろう。そしてそれこそが家庭や会社、そして社会全体を明るく照らす源となってくれるのではないだろうか。